引き続きフォーラムレポートです。
今回のフォーラムで一番注目していた講演です。
5. 講演の部
(司会:若林良和 愛媛大学南予水産研究センター副センター長)
基本講演 「カツオをめぐる国際環境と日本」
(末永芳美氏 東京海洋大学大学院教授)
今、世界的にカツオの漁獲量は増加し続けていて、なかでも増大が著しいのが中西部太平洋水域(赤道下、インドネシアから太平洋の中心部にかけて)なのだそうです。
このことが日本周辺へのカツオの来遊の減少の一因ではないかと懸念されています。
日本ではマグロとカツオを全く異なった物として扱いますが、英語で Skipjack tuna と呼ばれるように、欧米ではカツオをマグロ類の一つとして捉えられているようです。
カツオ・マグロ類の捕獲量は1970年頃よりまき網船による捕獲量の増大とともに、右肩上がりに増加。
特にカツオは1970年頃に比べて5倍以上にまで増えているのだそうです。
世界的にカツオの消費も増大しているんですよ。
まき網船による捕獲地はそのほとんどが南緯0°の西部太平洋、ここはカツオ・マグロ漁業の「最後の草刈場」とも呼ばれ世界中のまき網船が集中している場所であり、日本の生命線でもある地域なのです。
ではなぜ世界中がカツオを奪い合うのでしょう?
そのほとんどは缶詰原料なのです。
あれ?
缶詰ってツナ缶っていうぐらいだからマグロじゃなかったっけ?
その通り!!
でも今、マグロ→カツオへとシフトしているんです。
その理由として、
・クロマグロの漁獲制限
・ビンナガマグロの減少
・イルカ保護によるキハダマグロ回避
・宗教に拘らない食材である
・世界的な健康ブーム、魚食ブーム
・非常食(戦争等による)、保存食としての需要
・欧米、中東、アフリカなど、世界でも好評な食材である
などがあげられ、世界中がカツオを奪い合っているのだそうです。
カツオは主に缶詰になるわけですが、世界最大の缶詰基地はどこにあるが知っていますか?
それは タイ です。
世界中のカツオがタイに集まります。
カツオの相場はバンコクで決まる、とも言わているほど。
世界の政治・経済によって相場も左右されるのですね。
鰹節のカツオもバンコク相場に大きく左右され、近年価格が上昇、なかなか安定していません。
そんなカツオ漁業ですが、今後はどうなっていくのでしょうか?
世界のまき網船が巨大化、最新鋭化している状況で、カツオ資源は大丈夫なのでしょうか?
カツオ資源はまだまだ豊富であるといった意見もあるようですが、現場の声からは、捕れる魚体も小さくなってきており危惧する声も多いようです。
が、こればかりは世界的規模で対策を考えないといけないことと、政治や経済が複雑に絡むため課題は多いようです。
鹿児島枕崎 伝承工房・鰹家